玉井詩織が万祝に挑戦「繊細さから鮮やかが生まれる」ダイジェスト(画像あり)

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アイドルグループ「ももいろクローバーZ」(ももクロ)が、伝統工芸の魅力を同世代の若者たちに教えてもらいながら、モノづくりに挑戦する連載「ももいろトラディショナル」。

ここではこれまでに掲載したバックナンバーをダイジェストで紹介します。

今回紹介するのは千葉の万祝(まいわい)に「ももクロの若大将」こと玉井詩織(たまい・しおり)さんが挑戦した第2シーズン。

万祝について教えてくれるのは、海外旅行中に祖父が作った万祝と出合い、内定していた就職を断ってこの道を選んだ平成生まれの職人です。

引用:玉井詩織 万祝に挑戦「繊細さから鮮やかが生まれる」|MONO TRENDY|NIKKEI STYLE
■桁外れの大漁のときに配られた万祝のはんてん

ステージではピアノやギターを披露し、歌番組の司会も担当するなど、「ももクロで一番器用」と評判の玉井さんが訪れたのは千葉県鴨川市。

房総半島の太平洋側に位置し、豊かな自然や鴨川シーワールドなどの観光スポットも多く毎年大勢の観光客が訪れる鴨川市は、古くから漁業で栄えた町でもあります。

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今回、玉井さんが体験するのは「万祝」。千葉県の伝統的な工芸品の一つです。
万祝とはいったいどんなものなのか。早速、今も万祝を作り続けている「鈴染」を訪ねました。

玉井さんを出迎えたのは平成生まれの鈴木理規(すずき・りき)さん。まずは万祝とは何か、説明してもらいます。

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鈴木 もともとは漁船の持ち主や網元が大漁を祝い、開いた宴会のことを「万祝」と言ったんです。
大漁を祝う宴会では、漁師や関係者全員にお祝いを配りました。
普通の大漁のときは手拭いを配り、桁外れの大漁のときにはんてんを作って配ったそうです。
いつしか、その桁外れの大漁のときに配られるはんてんのことを「万祝」と言うようになったんです。


万祝は江戸時代、房総地方で生まれたといわれています。
当時の漁師たちは正月になると、そろいの万祝を着て今年の豊漁を祈願し神社仏閣へ参拝しました。

万祝の特徴はカラフルな色合い、そして鶴や亀、松竹梅に代表される縁起のいい模様。
それらの絵がはんてんの裾に幅広く描かれています。

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■10時間立ちっぱなしで塗り続けたことも

万祝の絵は型紙を使って描かれます。

鈴木 描きたい絵が決まったら、その型紙を作るんです。柿渋を塗って補強した3枚重ねの和紙を、絵のデザインに合わせて切り抜きます。
その型紙を生地の上にのせて、上からのりを塗る。

のりが付いている部分は後から塗る絵の具が付着しないので、仕上げで反物を洗うと、その部分が白く残るわけです。
のりを塗った後の生地に色を塗る作業を「色差し」と言います。今回はこの色差しを玉井さんにやっていただきます。

工房には長い生地が水平に張られています。
生地にはすでにのりで絵の輪郭が描かれた状態です。

生地の裏には、布のたるみを取り色をキレイに塗れるようにする伸子(しんし)という針のついたひごが張られています。

玉井 この状態で塗るんですか。

鈴木 そうです。立ったままで塗っていきます。


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玉井 この布はすいぶん長いけど、どのくらいあるんですか。


鈴木 玉井さんの背丈に合わせたはんてんを作れるように、約6メートルの布を用意しました。
絵柄は万祝の基本ともいえる、鶴や亀、松竹梅など縁起物です。
これを全部塗ってもらうとものすごく時間がかかってしまうので、玉井さんには要所要所のポイントとなるところを塗ってもらいます。
まずはある意味、一番目立つところにある「大漁」という文字です。


左手に絵の具、右手にはけを持ち、生地の前に立った玉井さんは、まず生地の張り具合を確認します。
生地は立てられた2本の柱をわたるように張られているので、机に置かれた紙のように動かないわけではありません。

玉井 ちょっと揺れるね。

鈴木 絵の具をもつ左手で生地をつかんで押さえるんです。

玉井 私、塗り絵とか意外に苦手なんだよな。


そう言いながら塗り始める玉井さん。

玉井 立ったままずっとこの体勢で塗り続けるというのは疲れますね。長いときって、どのくらい続けるんですか。

鈴木 最高で10時間、立っていたことがあります。

玉井 10時間(絶句)。すごい……。

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徐々にはけの使い方も上手になってきた玉井さん。
「楽しい」という言葉も口をついて出てくるようになってきます。
そして作業を始めて20分。「大漁」の文字を塗りおえました。

鈴木 はい、これで「大漁」は終了です。

玉井 (工房の時計を見て)すごい、意外と時間が経っている。

鈴木 では、次がいよいよ本番です。「ぼかし」にいきましょう。

玉井 え、本番って、今のは本番じゃなかったんですかーっ?


■2つの色でグラデーションを作る

玉井 そもそも「ぼかし」って何ですか?

鈴木 2つの色を使ってグラデーションを作ることです。
まず基本となる色を塗って、その絵の具が乾かないうちに2つめの色を塗ります。
そしてはけを使って2つの色を混ぜていくのです。


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これから玉井さんが体験するぼかしは、次のような作業になります。

1 甲羅の地の部分を黄色の絵の具で塗る。

2 甲羅の模様を茶色の絵の具で描く。

3 茶色と黄色の境界線をはけでこすりグラデーションを作る。


鈴木 まず亀の甲羅をベースとなる黄色に塗っていきます。前回、勉強した色差しですね。  

さっそく黄色の絵の具を塗り始める玉井さん。生地が動いて難しそうですが。

玉井 安定しない。ただでさえ手が震えるのに、塗るもの(生地)も震えるから、難しい。
しかも(テーブルに置いた)紙と違って肘とかも置けないから、難しいです。


鈴木 でも初めてなのに安定しているのはすごいです。はけを持つ手が乱れるか、絵の具を持つ手が乱れるか、普通はどちらかが乱れるんですが、両方とも安定しています。  


最初の作業は、前回体験した「大漁」の字を塗るのと同じ。はけさばきも慣れてきた玉井さんは、5分ほどで甲羅を黄色に塗る作業を終えました。

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鈴木 さあ、ここからが時間との勝負です。今塗った黄色が乾かないうちに茶色を塗っていきましょう。


■亡き祖父が導いてくれた万祝の道

江戸時代から続く伝統的な工芸品である「万祝」を体験した玉井さんは、さまざまな万祝が飾られる別室にやってきました。まずは万祝の体験を終えた感想を聞いてみます。

玉井 難しかった。立ったまま動く生地に色を塗るって大変。
昔から私、塗り絵って苦手なんですよ。鈴木さんは昔から絵を描く勉強をしていたんですか。


鈴木 実は大学では全然関係のない、外国語の勉強をしていたんです。
大学4年生の時にはアパレルメーカーに就職が決まっていたんです。

そのときに祖父が亡くなって、父が1人で仕事をすることになってしまった。
将来的には家業を継ぐにしても、やっぱり社会人として働いてみたい。

でもそうすると父が1人で仕事をすることになる。
どうすればいいか考え始めたら、頭の中がパンパンになってしまって。
一度、自分を見直そうと思って、バックパッカーでアメリカ横断の一人旅へ出たんです。


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鈴木 その途中で鴨川と交友関係があったモントレー(カリフォルニア州モントレー市)を通ったんです。
日本にゆかりのモノがあるかなと思って立ち寄ったら、ミュージアムに祖父が作った万祝の大漁旗が飾ってあったんですよ。
これは何かの縁だろうと思って、日本に帰った後、内定をもらっていた会社に「家業を継ぎますので」と連絡を入れたんです。


玉井 おじいさんが導いてくれたって感じがしますね。


■作品を喜んでもらったときがいちばんうれしい

玉井 鈴木さんが仕事をしていて楽しいと思うのはどんなときですか?

鈴木 やっぱり自分の作品を一から作れるのは楽しいですね。
どんな会社に就職しても一部しか担当できない場合が多いじゃないですか。
その点、小さなところでやっているので、下絵作りから始めて、お客さんの手に渡るまで、すべてが見られますから。
自分が作った作品を手にとってもらって喜んでもらえるときが一番うれしいです。

玉井 手にとってもらったときのうれしさはすごくわかる。
私、CDショップにもよくのぞきにいくんです。
ももクロのCDを手に取ってくれている人がいると、陰から「お、いいぞいいぞ」って(笑)。
街中でも「ももクロが……」という会話が聞こえてくることがあるんですが、そういうときは心の中で「ここ、ここ」って叫んでます。
町の中で「ももクロ」という言葉が出てくるとすごくうれしいですね。


──「ももクロが……」って聞こえてきたときは、聞き耳を立てるんですか。

玉井 立てます。悪口じゃないかなって(笑)。

鈴木 でも、そういう状況ってうれしいでしょうね。
万祝はまだ国内でもよく知られていないので、どうすればもっと知ってもらえるかはいつも考えています。



■繊細さがあるから鮮やかさがある

玉井さんが「大漁」という文字を黄色に塗り、亀の甲羅では黄色と茶色のグラデーションを作る「ぼかし」に挑戦したはんてんが完成したのは、挑戦から1カ月後。
さっそく本番を前にしたももクロの楽屋に完成品を届けます。

玉井 ぼかしがうまくできているか、すごく心配。


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玉井 塗るのは本当に難しかった。
鈴木さんが塗っているのを見ていると、本当に繊細な作業なんだなって。
あの繊細さがあるから、万祝のこの鮮やかさが出るんだなと思いました。
日本の伝統工芸の深さを感じたような気がします。


エンターテインメントを始め、さまざまな世界のベテランたちに会う機会も多い玉井さんですが、伝統工芸を志す同世代に会ったのも印象に残ったようです。

玉井 日本特有の伝統工芸が少なくなっている今、私たちと同世代の人達がそれを残そう、受け継ごうと思っているのは、とても大切なことだなと実感しました。
鈴木さんにもぜひ万祝をなくさないように頑張ってほしいし、他の伝統工芸を勉強している人達にも大変かもしれないけれど続けていってほしいですね。


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